書評:人工知能の時代に必要とされる資質とは!?

Home/働き方、そしてキャリア/書評:人工知能の時代に必要とされる資質とは!?

今回の書籍:「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」井上智洋著、文藝春秋 2016年7月20日発行

 

2030年ころに、人間のように様々な知的作業をこなすことのできる「汎用人工知能」の開発に目途が立つ。そうなるとあらゆる人間の労働が汎用人工知能とそれを搭載したロボットに代替され、仕事がなくなる。全人口の1割しか働かない未来がやってくる。

 

本書が衝撃的なのは、そのような大胆な予測を打ち出し、さらには選択的な生活保護ではなく、「負の所得税」とも呼ばれる、全員に一定の収入を保障する「ベーシック・インカム」の導入を提案していることでしょう。

 

仮にベーシック・インカムが導入され、それがあれば暮らしていけるという状況になった時、はたしてどれだけの人が「収入を得るために働きたい」と思うかはわかりません。しかし、全人口の1割にしか仕事がなくなってしまうと聞かされれば、まず第一に「自分に仕事はあるんだろうか」と考えるのが自然ではないでしょうか

 

本書では人間に残り得る仕事の特質として、「クリエイティブ」「マネジメント」「ホスピタリティ」を挙げています。なぜならば、汎用人工知能であっても、人間の感覚との間に通有性がなく、これらの3要素を再現することは難しいからだそうです。(注)

 

2030年まであと13年。子どもたちはもちろんのこと、20代、30代にとっても他人事とは言えません。企業の人材育成についても根本的に見直す必要が出てくるのではないでしょうか。そのとき、教育はどうあるべきでしょうか。社会はどうあるべきでしょうか。学生時代に人工知能の研究をしたこともある経済学者による、気鋭の提案です。

 

 

注:もっとも、「全脳エミュレーション」という手法で、人工知能が完全に人間の脳を再現できるようになれば話は別だそうですが、筆者によれば21世紀中は、それは起こらないようです。