書評:経済成長の果実を皆で分け合うには?

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今回の記事:Hermann Simon (May 02, 2017), “Why Germany Still Has So Many Middle-Class Manufacturing Jobs,” Harvard Business Review https://hbr.org/2017/05/why-germany-still-has-so-many-middle-class-manufacturing-jobs, May 03, 2017

 

高度経済成長時代、主役は製造業でした。世界に誇る日本メーカーが誕生し、次々と雇用を生み出していきました。しかしながらサービスの時代に移行し、さらにインターネット、ソフトウェア、そしてAIの時代になり、全雇用に占める製造業の割合は、先進国では軒並み低水準となってしまいました。

 

そんな中異彩を放っているのがドイツです。ドイツではいまだにGDPの4分の1近くが製造業によるもので、その割合はアメリカ、イギリス、フランスの2倍にも上るそうです。したがって雇用への影響も甚大です。

 

その秘密が「隠れた世界チャンピオン」なのだそうです。ドイツには一般にはあまり知られていないけど、その製品では世界チャンピオンという中堅・中小製造業がたくさんあるのだそうです。日本でもそんな「隠れた世界チャンピオン」が生み出せれば、雇用の空洞化は防げるのではないでしょうか。

 

ではどうすれば「隠れた世界チャンピオン」をたくさん生み出すことができるのでしょうか

 

「隠れた世界チャンピオン」には5つの特徴があるそうです。その特徴とは、

 

  1. 20年の間、トップ・リーダーが変わらない(平均)
  2. 歴史的にドイツは小国に分裂していたので、ビジネスの「国際化」が進行している
  3. 産学連携による科学的・技術的研究の応用が盛ん
  4. 社内での徒弟制度・職業訓練に投資している
  5. 資産課税、相続税負担が比較的軽い=資本の蓄積が可能
  6. 言語面や交換留学等を通じて、「メンタルの国際化」が進んでいる

 

「隠れた世界チャンピオン」は往々にして「フォーカス」がハッキリしているため、国内マーケットだけを相手にしていると成長できません。そういう意味でも6番の「メンタルの国際化」はとても重要なのだそうです

 

これは日本の中堅・中小製造業にとって大きなハードルかもしれません。特に英語を使って仕事するうえで、日本人にとっては英語力よりもメンタルのハードルの方が大きいかもしれません。

 

しかし、語学力のハードルについては明るい兆しが見えつつあります。それは機械翻訳です。AIの発展とともに、益々進化していくことが期待されます。「通じれば良い」という程度の機械翻訳であれば、近い将来実現されるのではないでしょうか。

 

そうなったとき、より重要になるのが「メンタルの国際化」です。「メンタルの国際化」を果たせるか否かが、優れた技術を世界に広め、日本に雇用を生み出していくうえで1つの鍵となるかもしれません