第25号 米韓首脳会談は「終わりの始まり」か!?

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6月30日、米・トランプ大統領と韓国・文在寅(ムン・ジェイン)大統領は初の首脳会談を終えました。まず安全保障面における主なポイントは以下のとおりです。

 

安全保障面

  • 対北朝鮮では「最大限の圧力」をかけることで合意
  • 「北朝鮮の核問題解決に向けた韓国政府の政策の方向性を米国は支持した」との一文を盛り込み、強固な同盟関係を再確認
  • 外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)、高官級戦略協議体を定例化
  • 一方、声明文には「南北対話の再開に向けた文氏の意欲を支持する」との一文を盛り込み、THAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)にも言及しないなど、対話路線の文大統領のメンツを立てた
  • ただし北朝鮮との対話開始にあたっては、米側が「適切な環境下で」との条件を付けた
  • また、会談では在韓米軍駐留費用の韓国側負担増も言及された

 

全般的にトランプ氏が文氏のメンツを立てつつも、米側の対北朝鮮姿勢の変更にはつながらないような表現にこだわった様子が窺えます。文氏は当初、対話の条件を「核・ミサイル実験の【中断】」としていました。【非核化】を対話開始の前提として圧力をかけている米政権とは相いれません。米側が「適切な環境下で」との条件を付けたのは、対話開始の前提条件にある程度柔軟性を持たせるとともに、米側のこれまでの立場を堅持するという一挙両得の表現だったからではないでしょうか。

 

以上を踏まえると、両者が互いに配慮し、歩み寄った様子が窺えます。一部には米韓の不一致を心配する声もあるようですが、筆者はまだ互いに互いを必要としていると考えます。

 

次に経済面です。

 

経済面

  • トランプ大統領は米韓FTA再交渉を持ちかけるも、文大統領は受け入れず。共同声明にも「再交渉」は盛り込まれなかった
  • 代わりに「ハイレベルな経済協議体を軸にした経済協力の推進」との言葉が盛り込まれた。米側としては、これを「再交渉」のきっかけにする意図も見え隠れする
  • 文氏には韓国企業52社が同行し、5年間で計128億ドルの対米投資を表明。こちらは「産業協力対話」として共同声明に盛り込まれる

 

共同声明文に「再交渉」は盛り込まれなかったものの、トランプ大統領は経済面ではあまり妥協しなかったようです。大統領選挙における自身の支持層を考えると、トランプ氏もそうそう譲歩するわけにはいかないでしょう。

 

安全保障面で協調しつつも、経済面では米国が強気で交渉する。そんな米韓関係がしばらく続くかもしれません。

 

※写真はイメージであり、本文とは関係ありません。