第23号 ミサイル発射が続く北朝鮮。圧力をかけているのは?  

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北朝鮮の国営メディア、朝鮮中央通信が新型中長距離弾道ミサイル「火星12」の発射実験を14日行い、成功したと発表しました。

 

その結果、

  • 発射角度を高くし、高度2111キロメートルまで上昇したとされている。高度が上がると落下速度も上がり、米日韓による迎撃の難度が上がる
  • グアムの米軍基地まで届く可能性が高い。アラスカも射程に入る可能性がある

ことが指摘されています。

 

その主な軍事的意味合いは、

  • 日米韓は現状のミサイル防衛について再考を迫られる
  • アメリカ本土まで届く弾道ミサイルの開発も着実に進んでおり、アメリカにとっての脅威も一段増している

というところです。

 

これだけを読むと、北朝鮮が攻勢を仕掛けているように見えますが、必ずしもそうではありません。報道によれば、アメリカが北朝鮮に対して相当な圧力をかけている様子も窺えます。

 

  • 米空母カール・ビンソンを中心とする空母打撃軍は、5月14日時点では日本海にいた模様。北朝鮮からすれば、いつ攻撃されるかわからないため、緊迫した状態が続いている
  • さらにアメリカは朝鮮半島近海に空母・原潜を展開し包囲網を完成させ、北朝鮮がレッドライン(軍事行動を起こす基準となる行為)を超えた場合即対応できるよう、巡航ミサイルなどによる地下施設攻撃の準備も整えた模様
  • また対立を長引かせることで兵士が農作業に就けないようにしている。6月までの農繁期に欠かせないとされる兵士の労働力が失われれば、食糧危機を招くリスクもある

 

すなわち、北朝鮮の5月に入ってからのミサイル実験は、レッドラインを超えない範囲でアメリカからの圧力に抵抗する試みであったと考えることができるかもしれません。

 

アメリカは軍事的には着実に事を進め、北朝鮮が外交手段による解決に動き出すよう圧力をかけていますが、他方でロシア疑惑などにより外交面での不安を抱えています。トランプ大統領弾劾への動きが、朝鮮半島における外交不在を招き、不測の事態につながらないことを祈ります。

 

参考文献

「北朝鮮ミサイル発射 浮かび上がる3つの意図」日本経済新聞 2017年5月14日

「北朝鮮包囲網ほぼ完成か 米、ミサイル300発で圧力」日本経済新聞 2017年5月18日